2008年05月25日

食糧自給率向上のウソ



政府も野党もこぞって日本の食糧自給率向上を目指している。

メディアもその流れにのって、日本は食糧自給率を上げなくてはならない国という前提に立ち、「どう具体的に行うか」を報道している。
いわば金太郎あめ状態。


今時日本で行われる政策は、
万人にとって有益というような夢のような施策などない
はず。

食糧自給率を向上した場合にも、メリットを受ける人とデメリットが大きい人が存在するにも関わらず、
メリットばかりが誇張又はねつ造され、デメリット部分が無視
されている。

つまり食糧自給率向上に向けた動きの最も大きな問題は、
国民が大量のウソ情報によって催眠状態となって、コントロールされている
ところだ。

現実の真実を知らされた後で、国民自らが自由意思で判断するのであれば、何も異論はない。


食糧自給率を向上させなくてはならない理由として政府が挙げているのは、はだいたい以下のようなものだ。

1)食品の安全のため
2)戦争、天災などの有事のため
3)世界的食糧不足のため
4)日本の文化を守るため



では反論。

1)は国産食品が安全とういう考え方に基づいているが、これ自体が
迷信である。
そのようなデータは少なくとも僕が知る限り存在しない。
むしろアメリカの輸入通関で、国産食品のほうが中国産食品より
違反率が高いという信頼性の高いデータがある。それから判断するとむしろ食品のリスクが高まるということ。
つまり
1)の理由は国民の錯覚に基づいたものでしかなく、デタラメ
と言ってよい。

2)について。
今時、戦争によって日本が世界から孤立して食糧が輸入できなくなるなどとは考えられない。
孤立する可能性が極めて低いうえに、仮にそうなったとしても、莫大な食糧のお客さんである日本に売らないということは、輸出国にとって大打撃になるためあり得ないと言っていい。
天災にしても、日本に入ってこないほどの世界的天災など想定できないし、
自給率を向上させ狭い日本で生産されたほうが、天災によるリスクが高まる
ぐらいである。

3)について。
国のボーダレス経済が広がる中にあって、
食糧も基本的に高く買う方向に流れる。

最近、一部の国に輸出規制の動きがあるが、それは国内価格と輸出価格に大きな違いがない場合だけ。
日本の食糧輸入量の上位3カ国はアメリカ、中国、オーストラリア。
これらの国は食料輸出が巨大産業であり、高く売れる日本に輸出しなくなるということは、とても想定できることではない。

4)について。
具体的には、日本の食文化を守ろう、日本の稲作などの栽培技術や景観を守ろうということ。

確かに、文化というのは、一度消えてしまうと、復活させるのは困難なので、絶やしてはいけないという面では賛成できる。
ただし、既に日本の稲作を守るためには莫大な税金が投入されていることも忘れてはいけない。

農家に補助金を与え、米には700%もの関税をかけ、外国から安い米が入ってこないようにしている。


おかげで、食卓にのぼる米の自給率はほぼ100%。


食糧自給率39%しかないと言われるが、それでも農家に対して莫大なお金が使われているから、まだこれだけの自給率があるのである。


話をまとめると、食糧自給率向上によるメリットは2)と3)が可能性が0とはいえないという程度の可能性があることと、4)だけ
といえよう。

しかし実は、農家がいい思いをするというのが最大のメリット(農家にとって)だ。

そして政治家は与野党問わず組織的な農民票が欲しい。
官僚も権限を拡大できるからメリットは大きい。

つまり農家、政治家、官僚にとっては確かにメリットがある。


これに対して
デメリットは言うまでもなく、食品の値段が高くなること。

国際的な食糧価格の急騰で、日本で作る場合との値差は縮まってはいるが、それでも平均的にいうと通常で2倍。米は4〜5倍。

もう一つのデメリットは天災の影響が受けやすくなること。


日本で食糧パニックが起こったのは1993年。
全国的な冷夏を原因として、皮肉にも
食糧自給率100%の米で起こった
ことを忘れてはならない。


このような実態を知ってから何を選択するかはあなた次第である。


メディアはほとんど横ならびではあるが、例外もある。
テレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」では違う世界観がある。

先週、食糧自給率向上問題を取り上げ、小谷真生子キャスターが
解説者に「今後高くなる外国のものを買うのがいいのか、国内で自給したほうが安いのか、どちらなのでしょう?」と聞いた。
解説の五十嵐氏は「おそらく、外国から買った方が安いでしょう」

思わず心の中で、拍手を贈っていました。

考えてみれば、当たり前のことだが、その当たり前の報道が少ないのが深刻な催眠状態に陥る要因でしょう。








posted by うな太郎 at 20:13| Comment(3) | TrackBack(2) | 食品の安全 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
大変興味深く読ませていただきました。
1点、気になるのが原油高です。

(3)の部分では、物流の「グローバル化」を前提としていると思いますが、原油高騰が続くと予想されている昨今、物流のグローバル化は縮小してゆくという考えも聞かれます。

原油高による輸送コストの大幅な増大、CO2排出増大を加味しても、やはり、輸入品の方が安く、安定的に入手できるということなのでしょうか?

ワールドビジネスサテライトでの五十嵐氏の発言にはそのあたりに言及されていなかったでしょうか?


長々と失礼しました。
Posted by しんちろ at 2008年05月31日 14:34
しんちろさん、コメントありがとうございます。
結論から言いますと、今後の原油高による輸送費用の増大を考えても、輸入品のほうが安いでしょう。
最近の原油価格は需給バランスから割り出した価格の2倍以上といわれ、既に異常な高値なので、これが今後3倍、4倍になるとは考えられません。
また、そもそも穀物の輸送は大量輸送のため、原油価格による輸送費の影響は受けにくいものです。
CO2の問題は別に考えなくてはなりません。
もし、環境のためには輸送を減らして、自国生産を増やすということでしたら、コストには目をつぶることになります。
しかし、日本で生産した場合、そもそも最適な生産地でないために、農薬や肥料をたくさん使用しなくてはなりません。農薬や肥料の生産にもCO2が出ます。小規模農家が多いので耕運機やトラクターの使用も決して効率的にはできません。
そこまで計算しなくてはなりません。
Posted by うな太郎 at 2008年05月31日 17:00
アメリカの例を見ていると、工業的な農業は土地を破壊していると感じます。日本は起伏に富んだ大地が広がり、風や水に恵まれた自然環境があります。私は食糧自給率を上げる方針には賛成ですが、大規模農業を求めているわけではありません。政府の方々の話を聞いていると、この認識の違いが埋まることはないのだなあと落胆しています。
Posted by のんべ at 2008年06月10日 09:05
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